患者・家族の「並外れた」入院診療経験を達成するために
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訳者
越智 小枝 (おち さえ):インペリアルカレッジ・ロンドン公衆衛生大学院生
一原 直昭 (いちはら なおあき):ハーバード大学公衆衛生大学院生、横浜市立大学附属病院 循環器内科・救急部
解説:患者・家族の診療経験とリーダーシップ
患者中心の医療には、実はリーダーシップがなによりも大切です。なぜなら、医療機関が全体として患者中心となるためには、全てのレベル、全ての役職の人が組織の枠を超えて患者中心に動かなくてはならないからです。大局観と強いビジョンを持ったトップリーダーと、組織内外の各レベルにそのビジョンを共有するチームリーダーの存在が欠かせません。
もう一つ大事な事は、スタッフが気持ちよく働ける職場環境でなくては患者・家族の診療経験も良いものとはならない、ということです。スタッフに「自分がいいと思う医療を得るためにはどのルールを破りたいと思いましたか?」という質問をしたCEOの例は印象的です。自分の診療行為が組織に支えられている、という自信は自然に患者に伝わります。このWhite Paperで「患者・家族中心」と言いつつ多くのページをリーダーシップとスタッフ満足度に割いていることは、日本の医療人にはない発想と言えるかもしれません。
そして医療従事者が忘れがちなこととして、患者・家族から学ぶという精神があります。日々の回診や会議に患者・家族を参加させる病院はまだそれほど多くありません。もちろん参加したくない、という患者さんもまだまだ多いと思います。しかし、いかに従来の常識の枠を超えて選択肢を患者さんに示すことができるか。本当の患者中心の診療を達成するために、柔軟な発想は欠かせないのです。
このWhite Paperでは、一つ一つの項目はごく当たり前の事を言っているように見えるかもしれません。しかし何故それらがつながって本来のゴールである患者・家族の診療経験の改善につながるのか、と言う仕組みに注目すると、筆者がシステムの中での視点の違い・レベルの違い・外力を全て俯瞰した上で1次ドライバ・2次ドライバを吟味したことが分かってくると思います。内容だけでなく、構成そのものが一つのプロジェクトを立ち上げるモデルにもなるのではないかと思います。
原著
Achieving an Exceptional Patient and Family Experience of Inpatient Hospital Care
Copyright 2011 Institute for Healthcare Improvement
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原著者
Barbara Balik, RN, EdD: Senior Faculty, IHI; Principal, Common Fire Healthcare Consulting
Jim Conway, MS, FACHE: IHI Senior Fellow
Lorri Zipperer, MA: Principal, Zipperer Project Management
Joanne Watson, MD: Health Foundation/IHI Fellow 2008-2009; Consultant Endocrinologist/Clinical Director of Patient Experience, Taunton & Somerset NHS Foundation Trust