医療における現場改善ネットワーク - Gemba Kaizen Network in Health Care

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点を動かせ!
~患者死亡は医師の責任ではない。が、より大きなものの責任である、かもしれない~

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訳者

越智 小枝 (おち さえ):インペリアルカレッジ・ロンドン公衆衛生大学院生
一原 直昭 (いちはら なおあき):ハーバード大学公衆衛生大学院生、横浜市立大学附属病院 循環器内科・救急部

解説:患者・家族の診療経験とリーダーシップ

 この文書に少しだけ登場するインペリアル・カレッジ・ロンドンは私が現在学んでいる母校でもあり、この「点を動かせ!(Move Your Dot)」運動は正に私の「医療改革」の認識を変えた原点とも言えます。
 自身の経験になりますが、現場の人間は患者さんが亡くなった事実を、あまり振り返りません。これは感覚が麻痺しているからでは決してありません。寧ろ、患者さんが亡くなるまでの間に現場で「全力を尽くして」しまっているからです。また、いくら経験を積んでも、患者さんが亡くなるということは非常に辛い経験です。現場の人間はあまりそれを振り返りたくないのです。
 しかし、ここで私が尽くした「全力」とはあくまで臨床現場の全力であり、組織としての最善の努力とは全く異なります。実際に英国でも米国でも、患者重篤度や年齢など、全てを調整した上で患者死亡率を測定すると、これはその病院全体の診療の質と密接に関係している、ということが分かってきています。学び始めた当初は私も「現場の分かっていない人間が言っている戯言だろう」と否定的だったのですが、今となっては、患者さんの死を受け止め切れなかった自分の狭量を恥じ入るばかりです。
 誤解を恐れず言うなれば、患者さんが亡くなることは、どんな場合においても現場の人間の責任ではありません。万一個人の裁量で人が亡くなるとしたら、それはそのような組織をまず反省すべきなのです。点を動かせ!運動はそのような認識に基づき、点だけでなく私たちがまず組織を変えるために動くことの大事さも教えてくれます。ここに出てくる参考文献も含めて読まれることをお勧めします。

原著

Move Your Dot
Measuring, Evaluating, and Reducing Hospital Mortality Rates (Part 1)
Copyright 2007 Institute for Healthcare Improvement

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原著謝辞

原著において、以下の人々および団体の貢献が記されている。
Sir Brian Jarman, MD, Senior Fellow, IHI
Tom Nolan, PhD, Senior Fellow, IHI
Roger Resar, MD, Senior Fellow, IHI
Our colleagues at Associates in Process Improvement
Members of IHI’s IMPACT Network and Pursuing Perfection initiatives

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