戦略的改善構想の実践
~もしも医療従事者がトヨタに学んだら~
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訳者
越智 小枝 (おち さえ):インペリアルカレッジ・ロンドン公衆衛生大学院生
一原 直昭 (いちはら なおあき):ハーバード大学公衆衛生大学院生、横浜市立大学附属病院 循環器内科・救急部
解説:患者・家族の診療経験とリーダーシップ
現場から改善する、ということは、往々にして「個々人が努力する事」と誤解されがちです。当然のことですが、個別の発想や、一見セットに見えてまとまりのないプロジェクトでは、システムレベルでの改善を達成することは困難です。医療改革を単なる善意の羅列で終わらせない為、このWhite Paperでは資源やコストを踏まえた現実的なポートフォリオの作り方をシステムレベル、現場レベルで紹介しています。
ムリ・ムダ・ムラをなくすトヨタ方式は有名ですが、医療現場にこれを適応しようとした場合、そこには「善意の罠」というもう一つの障害が発生します。
「どのプロジェクトも患者を救うものなのだから、両方手掛けなくては。」
このような善意がプロジェクトの大幅に効率を下げている現状を目にされた方も多いのではないでしょうか。改革は「意思・アイデア・実践」の3要素からなります。医療改革において意思とアイデアに比べ実践が弱い理由の一つに、善意が先走って多くを抱え込んでしまうという医療従事者特有の性質があるようです。このPaperを読まれる方は、このような性質がビジネスライクとされる米国でも同じだということに気づき、共感を覚えられるかもしれません。
筆者はこのような医療特有のピットフォールを的確に指摘しつつ、トヨタ方式の概念を医療の現場に導入する方法につき、実例を挙げて説明しています。身の丈に合った計画を立て、効率よく会議を進行させることの重要性が繰り返し主張されており、管理職の人間には多少耳が痛い部分もあるかもしれません。
更に、一つのプロジェクトの成功だけでなく、その後につながる学習システムや人員養成にまで触れており、システム内で動く人間としては正にマネジメントの初歩的教科書とも呼べると思います。
興味のある方は原本・及び文末に紹介されている参考文献も是非ご一読下さい。
原著
Execution of Strategic Improvement Initiatives To Produce System-Level Results
Copyright 2007 Institute for Healthcare Improvement
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原著者
Thomas W. Nolan, PhD: Senior Fellow, IHI